全身の皮膚が途切れることなく繋がっているように、解剖学的にみると人間の体の中には1つの繋がった膜が何重にも重なり合って張りめぐらされており、その中を神経や筋肉、骨、臓器、血管などのあらゆる器官が収められています。[図1]全ての器官は膜に包まれて保護され、繋がり、支えられているのです。
たとえば立っているときに重力によってそれらの器官がドサッと落ちないのは、内臓やその他の各器官を包む膜が骨格系に繋がり、支持されているためです。[図2]また、これらの膜どうしがスムーズに滑り合うことで私たちは身体を動かすことが出来ます。
このように身体の内部の全ての器官は膜により繋がっていて、お互いに協調しながら機能していることから考えると、たとえば内臓やその他の器官にある問題が筋骨格系の痛みの原因となることもあり、また逆に筋骨格系の問題が内臓やその他の器官の不調の原因となることもある、ということが解ります。身体のある1つの領域に歪みや障害が生じると、遠く離れた場所にまで影響を及ぼすのです。[図3]
しかし、その自己治癒力にも人それぞれに許容範囲というものがあり、その人の許容範囲を超えた大きな物理的外傷や心理的外傷、有害な環境の影響を受けた場合や、または様々な要因の積み重ねによって許容範囲を超えた場合には、自己治癒力は減退し回復する力が妨げられてしまいます。
その結果、病気や痛み等様々な症状が引き起こされると考えています。
1. 物理的外傷(骨折や転倒、交通事故などによる衝撃)
2. 様々な出来事による心理的外傷(受胎~出生~現在まで)
3. 日々の精神的なストレス(環境や関係性など)
4. 生活習慣(食生活や生活環境、摂取物など)
主にこれらの原因により、身体のシステムは影響を受けます。その影響により身体の構造(骨格や臓器・神経・血管など)が捻じられ、圧迫、収縮されます。それに引き続いて身体の働き(神経や血液・リンパの流れなど)が低下または停滞することによって、様々な器官への栄養供給が遮断され、排泄作用も低下し、自らを修復し回復するプロセスが妨げられてしまうのです。
たとえば火事の状況を想像してください。根本的な原因が「火」、痛みや症状は「火災報知器」に例えることができます。痛みや症状のみを抑えようとすることは、火を消さずに火災報知器だけを止めてしまうことになるのです。健康を取り戻すためには根本的な原因である「火」を消す必要があります。そして根本的な原因を取り除くことにより身体が本来持っている自らを回復する力(自己治癒力)を引き出し、健康な状態へと導くのです。
オステオパシーでは患者さん自身の自己治癒力・免疫力を引き出すことで回復へ導くため、特定の症状に有効というものではなく、適応範囲は非常に広いと言えます。
人が本当の意味での調和を取り戻した時、身体や心、精神をリラックスさせる事ができ、様々なストレスや生活環境などにも対応し適応することができます。オステオパシーではこの3つのバランスが取り戻され調和がとれた時に初めて真の健康な状態であると考えています。